開発の経緯

はじめに

 商品名を”ペインフリーテープ”と名付けたこのテープは、元々“フィードバックテーピング法/F.T.M®”と言う、私が考案した全く新しいテーピング法です。

 このテーピング法の最大の特徴は、痛みを人の発する情報(信号)ととらえて、治療の方法を痛みに教えて貰おうと言う発想から生まれました。

 そもそもこの痛みから学ぶと言う考え方は、操体法の創始者である橋本敬三先生の提唱した操体法の基本原理に基づいています。

 操体法の原理と言うのは快と不快と言う二種類の異なる人間の感覚に基づいて、痛みを緩和したりあるいは動きの悪い関節を動きやすく改善するといったものなのです。
 例えば肘を曲げて痛い場合は、反対方向の伸ばすという動作を行うことで痛みを緩和する、あるいは動きにくいものを動きやすくするという至極シンプルな方法です。

 これはある種の人間の持つ法則性とでも言うべきもので、痛みをメッセージとして捉えることで自ずと治療する方法(方向)を導き出すものです。
 この法則が現代の医学において認められているか否かは別として、我々のような用手療法の臨床を行う者からすれば至極当たり前の法則と言えるでしょう。

 この方法論については、人間の持つ法則性をもっと積極的に生かす方法は無いものか、との考えに基づいて草案されたものであります。 
 結論から言うと、例えば腰の痛みを訴える患者さんについて、腰のどの部分に最も痛みが強いのかを教えてもらい、その最も痛い部分を特定するわけです。

 これは腰痛の種類を問いません、その腰痛の原因が骨にあるのか、あるいは筋や筋膜にあるのかはあまり関係がないのです。

 ただし根本的な治療と言う意味合いにおいては、あくまで痛みを緩和する、あるいは解消すると言うことが目的となります。
 例えば昔から東洋医学としてよく知られている“鍼治療”がありますが、この鍼治療を腰痛に用いる場合、たとえ鍼治療によって痛みが緩和したとしてもそれはあくまでも痛みが楽になっただけであって、腰痛の根本原因そのものは改善されていない可能性が考えられます。
 これは痛みがあるから消炎鎮痛剤を飲む、といった対処法とも共通していると思われます。
  ただ鍼治療の場合は、鍼に対して恐怖心を持つ方も少なからずおられ、おそらくこれが鍼が広がりにくい理由の一つかと思えます。
 また鎮痛剤などの場合は、胃腸の弱い人にとっては若干副作用なども考えられ、長期に飲み続ける事は好ましいことではありません。

 その点この”ペインフリーテープ”に関しては、ほとんど副作用らしいものはないと断言できます。
 あるとすれば夏場に皮膚の敏感な人がテープの下に溜まった汗でかぶれを起こす事ぐらいでしょう。

 また施術方法についても、痛みのある部分を特定し、その部分から痛みの消える方向を探して、その方向に特殊な伸縮性を持たせたテープを貼り、痛みを誘導することで痛みそのものを軽減したり、或いは消失させると言う実にシンプルな方法でなのです。

はじまりは皮内鍼

 このテーピング法の原型を開発したのは今から約20年近く前のことです。
 もともと私は鍼治療の中で、皮内鍼と呼ばれる皮膚に沿って長さ3 mm程度の鍼を入れて固定する方法があり、その鍼先の方向によって痛みの和らぐ程度に差のあることに気づいたのが、そもそもの発端でした。

 この皮内鍼による治療法にはいろいろなやり方があって、基本的には痛みのある場所を探してその部分の皮下にこの短い針を横に刺し、テープなどで固定をしておくという方法を取ります。
 その他にも経絡と言う東洋医学独特の気の流れるルートを使って、通常の鍼と同じように治療するという方法もとられています。

 私は当時この皮内鍼を用いて行う治療法について、もっと効果を上げる方法は無いのかと随分試行錯誤を繰り返していました。
 それと同時にわたしが最も得意とする“用手療法”の中で“操体法”と呼ばれる手技があり、その方法の基本原理に基づいて痛みが和らぐ方向とそうでない方向があるのではないかと思い、色々と試してみると鍼先の向く方向によって痛みの緩和される程度が違うことがわかってきたのです。

 しばらくはその方法で治療に取り組んでいましたが、やがてこの原理をテーピングに応用することができないのだろうか?と言う疑問を持ち、次はテーピングを用いてまた新たな試行錯誤の繰り返しに入ってのです。
 その結果に着いたのがこのフィードバックテーピング法の原型ともいえる方法でした。
 しかしその当時は今のように具体的に商品化する、と言うところまでは行き着きませんでした。

 また自分の身体的な、特に筋肉の弱化を自覚するようになり、自分の為に始めた加圧トレーニングがつの間にかブームとなり、それが仕事の中心となってしまい、このテーピングのための商品の開発やさらなる技術の研究などが10年近くもの間棚上げになってしまいました。
 その加圧トレーニングのブームもやがて一段落し、もう一度自分の仕事を見直す機会にも恵まれ、また協力していただく方々にも恵まれて今日に至ったのです。

有限会社東洋物療研究所
所長 藤田 誠